ハリつな

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君の想い、その願い 感想

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tumugi 、哀傷恋愛ADV
原画 あかり☆かずと、シナリオ 椎野順那

―あらすじ―

季節は秋、主人公の佐間景志は恋人であり病弱であった天宮悠を救うため、東京で一人暮らしをしながら医学生として多忙の日々を送っていた。
そんなとき留守番電話に幼なじみである高原夏希から何回も電話がかかった形跡があることを見つける。
嫌な予感がした景志はすぐさま夏希へ折り返しの電話を掛けた。そして彼女から伝えられたのは悠の病死であった。
景志は失意に打ちひしがれ、彼女の墓参りのために故郷である秋篠町へ向かうのであった。

 


―キャラクター紹介―

佐間 景志(さま けいし)
声:なし
身長176cm、体重61kg、血液型:A型、誕生日:1月10日、趣味:音楽鑑賞・天体観測
主人公。秋篠学園在学時に悠と付き合っていたが、病弱な彼女を救おうと東京の大学医学部に入学。
ぶっきらぼうな言葉づかいではあるが、優しい性格。
思慮深くしようと努めてはいるが、繊細な面や感情的になる面も。
 

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高原 夏希(たかはら なつき)
声:三木本彩響
身長159cm、体重46kg、血液型:A型、誕生日:4月14日、趣味:料理・洗濯・音楽鑑賞・編物
主人公の幼稚園時代からの幼馴染。秋篠学園卒。
家庭的であり、また思いやりにあふれる優しい少女であるが、頑固な面もある。

 

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倉本 沙奈(くらもと さな)
声:乃田あす実
身長152cm、体重41kg、血液型:B型、誕生日:3月22日、趣味:小物集め・野良猫の餌付
主人公の従妹。3歳のとき孤児となって、一時期主人公の家に居候していた。
それ以来主人公にはあえていないが、主人公のことを慕っている。
おとなしい性格で人見知りがある。孤独感にさいなまれることもしばしばある。秋篠学園在学。

 

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天宮 佳織(あまみや かおり)
声:如月葵
身長163cm、体重48kg、血液型:O型、誕生日:5月10日、趣味:水泳・チャット
悠の妹。典型的なスポーツ型の少女で、明朗活発で男勝りで気が強い性格だが女性的な一面も。
姉にあこがれを抱いていた。姉の見舞いに来なかった主人公を恨んでいる。秋篠学園在学。

 

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赤羽 響子(あかばね きょうこ)
声:一色ヒカル
身長161cm、体重50kg、血液型:AB型、誕生日:3月8日、趣味:熱帯魚の飼育・ガーデニング
悠の入院していた牧原総合病院の看護師。
おとなしく繊細であるものの真面目で優しく面倒見が良い性格である。

 

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佐々川 香澄(ささがわ かすみ)
声:本条真琴
身長168cm、体重53kg、血液型:A型、誕生日:6月14日、趣味:アロマオイル・枝毛探し・ネイルアート
秋篠学園時代の悠の親友。主人公の帰郷の数日前に突然帰郷。
高校時代は頭がよく面倒見もいい姉御的性格だったが、姿も性格も変わり果てて帰ってきた。
具体的には他人との接触を嫌う、無口な性格になった。
まるで何かを求めるような遠い目をしながら、ぼんやりとマッチの炎を燃やし尽くすのをみている事が多い。

 

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天宮 悠(あまみや はるか)
声:楠鈴音
身長160cm、体重45kg、血液型:A型、誕生日:11月17日、趣味:ピアノ演奏・散歩
享年24。主人公が高校時代につきあっていた。幼い頃から身体が弱く、本当は主人公よりも1つ年上。
穏やかで礼儀正しい性格。

(あらすじ、キャラクター紹介はWikipediaより引用、1部ネタバレになりそうな所は編集しています)


―感想―

このゲーム、ネットで「後味悪い」「鬱ゲー」「地雷」というなかなかの評価がされています。
逆にその評価で興味を持ったのが私。やめておけばいいのに自分から飛び込んじゃうんだよね。
それで再起不能になりかけるくらい落ち込んだりするのにネ!
特に「地雷」という部分。地雷と一言で言っても色々なものがありますし、私もなんとなくでしかわからないので、ちゃんとした意味を知ろうと思い検索しました。
そして出てきたのが「ジャンル、カップリングやシチュエーションなどで苦手だったり嫌いな話」とのこと。
なるほど。遊んだ人が苦手だったり嫌いなシーンがあったら、そのゲームはその人にとっての地雷。
人の数だけ地雷がある。君には地雷だが私は平気もあり得るし、その逆もある。
だけど、なぜか自分は平気って思いこんで、色んなゲームに手を出して撃沈する。
そこまでがテンプレの私です。

結果から言いますと、響子さんと香澄先輩の年上2人組が、後味の悪いエンディングでした。
詳しくはネタバレ感想で書きますが、この2人には後味の悪いエンディングしか用意されていなくて、クリアした後「どうして……」という感想しか出てこなかったです。
そういうハッピーではないエンディングもありだと思いますし、逆にそういうエンディングは大好物ですが、この2人にはその必要性は無かったのでは?と思ってしまいました。
何を意図して書かれたシナリオなのか私にはわかりませんが、このエンディングは酷いと感じました。
ちなみに響子さんのシナリオは、ある程度先が読める展開だったため「絶対これってこれがこうなってあーなるやつじゃん!進めたくない――!!」って私の心の葛藤が凄かったうえにあのエンディングだったので、もうね……。
夏希にも2人に負けないようなバッドEDがあるのですが、凄く良いちゃんとしたハッピーEDもあるので本当に本当にどうしてって言葉が出てきてしまいます。
ただオールクリアには価値アリです。
最後までやって本当良かったよ。心が浄化されたしキュンキュンした―!!

シナリオはフルプライスにしてはボリューム不足に感じますが、私としては短いながらにもまとまっていたように思います。
もちろん短いのでツッコミ所があったり、話の展開が早かったり描写不足な部分もあるのですが、どのシナリオも上手い表現が時折出てくるんですよ。
ニヤニヤしてしまうものから、ハンマーで殴られたような衝撃がきたりするので思わず感心しました。
そのため、全体的に見ると平凡に感じるシナリオかもしれませんが、そこに少しだけ違う色が混ざってくるので私は途中で飽きることなく最後まで読む事ができました。
始まりが疎遠になっていた恋人、悠の死からなので全体的な雰囲気は明るくありません。
悠の妹からはその事で主人公を恨んで、攻撃的な態度をとってきますしね。
ヒロイン達はほぼ何かしら悠と関わりがあるので、会った時の会話も悠絡みになります。
その中で夏希と景志の会話があるのですが、

 

「ねえねえ!この曲、あの時の曲とおんなじ!ケイ君覚えてる?」

忘れるはずない…あれは俺がリクエストした曲だったんだから。
でも、軽い調子で答える気分にはとてもなれなくて俺は黙っていた。

「ごめん…」
「なんで夏希が謝るんだよ」
「よけいなこと…思い出させた」
「よけい?」
「あ…ご、ごめん…」


この会話にもの凄く感心しました!
夏希は外から聞こえてきたピアノの曲が悠が引いていた曲だと話す。
それを聞いた景志は、恋人であった亡くなった悠の事を思い出して少し気持ちを落とす。
夏希は自分のした話で、景志を落ち込ませてしまったと思い「よけいな事」と言って謝ってしまう。
「よけいな事」をネガティブな意味でとらえてしまった景志が、夏希に突っかかる。また謝る夏希。
こういうのって実際によくありますよね。前の発言をフォローしようとしたら、更に状況を悪化させてしまう。
この会話が凄くリアル感が出ていて、胸にグッときましたね。
まだ私は大切な人との別れを経験した事がないので、現実は違ったり人それぞれだと思いますが、景志が彼女達とのふれあいの中から何かを見つけて、前向きになり立ち直るまでの描かれ方は本当に自然だと思いました。

キャラクターは見た目や性格で凄く個性的な子はいませんが、平凡でもない部分があってちょうど良いキャラ造形だと思いました。
特に悠の描写は良かったですね。
主人公やヒロイン達の思い出話で悠が出てくるのですが、その思い出の中で悠の顔が描かれてないんですよ。
後ろ姿や帽子で隠れて表情が一切見えないので、皆の中で悠が神聖な扱いになっているようで良かった!
この描写で悠は素敵な女性だったというのも伝わってきましたしね。上手い表現だったと思います。
後、このゲーム妹が二人います。1人は悠の妹でもう1人は従妹。
妹みたいな存在が2人もいるのって珍しい気がして、面白いなと思いました。

OPとEDが素晴らしい!
どちらも好きなのですがOP「君の想い、その願い」が素晴らしいです。イントロがおしゃれなんですよ~。
ああいう始まりが好きというのもあって1度聞いただけでハマっちゃいました。
EDの「やさしい風」は何度か聞いているうちに好きになったスルメ曲です。
全体の雰囲気が優しくて、じっくり聞いてしまいますね。ただ後味悪いEDの後にこの曲が流れると悲しさが倍増になりました……。2人のEDに対して、本当どうして……って思いが抜けてくれません。
BGMも全体的に合っていました。
香澄先輩のテーマ曲がめちゃくちゃミステリアスで、先輩の雰囲気に凄く合っていて良きです。
佳織のテーマ曲は元気いっぱいで、こちらも佳織にとても合っていたのですが、キツイ態度をとっている佳織の時にも流れるのでちょっと場面と合っていない部分もありました。

システムは基本的なものは揃っているので、不便は特に感じませんでした。
ただ、カーソルが会話ウィンドウにあるスキップやメニューボタンに合わせると消えるので、たまにカーソルを見失います。
カーソルがスキップなどを選択していると、ボタンに色がつくのでわかると言えばわかるのですが、カーソルが消える事に対して微妙に遊び辛い感覚を持ってしまいました。凄く些細な事なんですけどね。

ネットに地雷や後味悪いと書かれていたこの作品。
実際に人によっては地雷だと思いますし、後味悪いEDもありますが、本当に個人的には凄く楽しめました。
短くまとまっていたからこそ、キャラクターのセリフや態度から色々と思ったり感じたりしたので、良い想像の余地があったと思います。
私は勝手にアレコレ想像して楽しんだって感じなので、ちゃんと丁寧に物語を説明して欲しいという方には、どうしても物足りないゲームになってしまいますね。
ただ、このゲームは私にとって、ネットの評価と自分の評価が違った思いがけない作品となりました。


=ここからネタバレ感想です=

 

幼馴染って1番近くにいるので恋愛で有利に感じますが、近すぎるせいで異性として見られないというのもあって、主人公と結ばれないと負けヒロイン感が凄いですよね。
そのせいか、ゲームでは幼馴染のシナリオには凄く力が入っていると思います。
だから個人的に幼馴染ヒロインって大好きなんですよね。
夏希も昔から景志の事が好きだったけど、気付いたら景志は悠先輩と付き合っていたという負けヒロインでした。だけど、悠が亡くなった事で諦めていた恋のチャンスが巡ってきてしまった。

そう、〝巡ってきてしまった〟んですよ!

そこの葛藤が凄く良く書かれていたんですよね~~~!!こういうの大好き!!
景志が悠の死をきっかけに夏希の事を初めて考えるようになったのも良いです。
自分には夏希が必要だと景志が夏希に告白するのですが、だからと言ってすんなり返事も出来ないし私じゃ悠先輩の代わりにはなれないと、告白を1度断る所が葛藤の大きさを感じれて凄く凄く良い!!
別れたならまだ素直に返事が出来たかもしれないですが、相手が亡くなったところが夏希の葛藤を更に大きくしていますよね。
学生の時に手編みのマフラーを誕生日に渡そうと景志の家の前で待っていたのに、景志の首には悠先輩のマフラーが巻かれていたのを見ると渡すのをやめて、しかも景志に手に持っているものを追求されると意地でも渡さないでそのマフラーを捨ててしまうところがめちゃくちゃいじらしくて好き!
その話を今になってしちゃうところも、また良いんですよね~~~。
景志に告白されてから願掛けでマフラーを編み始め、あの時に渡せなかったマフラーが編めたら、景志の気持ちに応えようとするところに強い想いと意志が感じれて凄く好き。
夜遅くまで夏希の部屋の明かりが点いている理由がこのためってのが、本当にもう健気でかわいい……。
町を出て一緒に住む事になった時、夏希が悠の切符も用意して一緒に出発と言ったり、2人の間に生まれた子供の名前を悠にしているのは、死者を自分達に都合よく利用しているようにも見えたが、大切な人の死という悲しみから立ち直るには少しくらい自分勝手な考えをしないと乗り越えられないのかもしれないと思いました。
なぜか夏希にだけ用意されている事故死エンドは、急転直下な内容にびっくりしましたね……。
しかも死体が霊安室に安置されているCGもあって、えぇ……ってなりましたよ。
それを見た景志が「自分が愛すると目の前からいなくなってしまうのが俺の運命なのだろうか」って激しく動揺していましたが、急な展開だからそりゃそうなるよね。
「それでも人は生きてけと俺に?」と自問自答する景志が悲痛でした。

沙奈の赤い傘のエピソードは、思春期特有の面倒くさい部分が出ていて非常に良かったです。
自分の知らない女性に景志が赤い傘を貸しているのを偶然見てから、もうその傘は自分の物ではなくなったと思い込んで、その傘を2度と使わないところが実に面倒くさい考え方で良い!
これって凄く些細な事だけど、本人にとってはとても重要な事なんですよね。
しかも多感な思春期とくれば、狭い世界が自分の全てと思ってしまうくらいですからね。
こういうのたまりませんよね~~~。
両親と祖父母の死によって沙奈は2度も1人ぼっちを経験。しかも天涯孤独になるには早すぎる年齢でなっているので孤独という恐怖に支配されているのが可愛そうでした。
遠縁の景志の家に1人で暮らすというのも更に孤独が増しますよね。
家族3人が暮らすような大きい家に1人ぼっちって怖いし寂しいですよ……だからあんなにたくさんの猫がいるのにも納得です。本当、こういう描写が上手いなと感心します。
こんな孤独を抱えている子に、将来の事を考えろというのは酷ですよね。
この先、出会いがあって1人ではなくなるなんて思えないですし、いつ出会いがあるのかもわかりません。そんな風に考えられるのって、ある程度大人になった人か心に余裕がある人だと思います。
そんな沙奈に少しづつ歩み寄って、寄り添おうとしている景志の様子がとても自然に書かれていたのが良かったですね。
「悠をひとりっきりで死なしてしまった俺に、まだ誰かを幸せにする資格なんて、あるのだろうか…あっていいのだろうか?」
「沙奈に対して、特別な感情があることは認める。けれど――それが悠に対する罪悪感からの逃避ではないと――果たして俺は、言いきれるんだろうか?」
と自問自答しているところとか凄く良い!
景志が家に帰ってきてから、沙奈がバランスを崩したようにどこか危うくなっていくのも、急に与えられた人の優しさに耐えられなかったのでしょう。
今まで無理して必死に我慢していた沙奈が限界を向かえた時、景志が自分を必要としてくれる沙奈を幸せにしてやりたいと決心するところはグッときましたね。
これは悠への償いでもなく逃避でもないと、ちゃんとした意思も持っているので非常に男らしいです景志君。
しかも将来のビジョンが何も見えてない沙奈に対して、看護学校を目指す事を進めているんですよね。
「理系が得意だから今からでも間に合う」「自分が研修を終えた頃には沙奈も看護師デビューだからそれまでは俺のアパートから通えばいい」とか進める理由やその後のフォローも入れて最後に「俺と一緒にいろ…沙奈」ですからね。大人の余裕を見せる景志君、パーフェクトじゃないですか!
ただ、その後に沙奈を捨て猫に見立てて、飼ってやるとか拾ったんだからなんて急にオラオラ系みたいなセリフを言うのはどうかと思いましたけど(笑)
エピローグでは景志と沙奈が田舎で小さな病院を開いているが、なぜか人より猫の診察のほうが多いとなっています。原因は病院にたくさんいる猫のせい。ここで実家で沙奈が飼っていた猫さん達もちゃんと連れてきたんだなってわかって、猫好きの私は一安心。
でも、獣医じゃなくても猫の診察ってできるの?と思いましたが、こんな野暮なツッコミはやめます。それに「沙奈と俺とネコ達と――そして、悠とともに歩く道」と景志がちゃんと猫達を含めているんですもの。この病院に猫を任せても大丈夫ですよ。
孤独な少女に手を差し伸べて、未来へと繋がる道を作って行く良いシナリオでした。

もう1人の妹、佳織。景志の恋人、悠の妹がヒロインって設定がもう良いです。
佳織は最初、敵意を見せてキツイ態度をとってきますが、その中には優しさも見せてくるので完全に憎んでいるわけではないという事がわかります。
話が進むと佳織が無理していた事がわかり、その日を境に急に甘えてくるので少し驚くかもしれませんが、きっと佳織の中で景志が姉のそばにいなかったのが許せないという思いと、自分は景志が好きという想いが複雑に絡み合ってああいう形をとってしまったのでしょうね。彼女も多感な思春期ですし。
元は優しい子なので、景志の事を憎みきれてない姿がツンデレにも見えます。これはこれで可愛い。
親はずっと体の弱い姉にかかりっきりなので、佳織は自分は良い子でいなくてはと我慢して生きていた。だけどそれは佳織が親に甘える事ができなかったって意味ですよね。
姉が亡くなった事で佳織は孤独感を味わい、自分の存在価値と自分らしく生きる事がわからなくなって、極端な行動に出ていく姿は思春期の特有な感じがでて良いです。
自分を傷つけたり、相手を怒らせて相手の中に自分の存在価値を位置づけたり、姉の日記に書いてあった事に反抗してみたり。本当はそんな気もないのにしてしまうところとかね。
その後は日記に書いてある悠の夢と願いで、佳織は自分を取り戻して景志も悲しみから立ち直って行きます。悠という存在が2人にとって大きな存在だったと感じ取る事ができます。
Hシーンにちょっとですがお尻をいじるシーンがあるのも○
「一夜明けて…佳織はもの凄く女の子らしく変わった。それこそ、変身って言ってもいいくらいに…。」こういう表現良いですよね~。なんだかニヤニヤしてしまいます。
後ですね―、死んだ姉の携帯を使って景志に電話をかけるシーンはエモすぎる!
景志の電話のディスプレイには悠の名前だけど、相手は佳織なんですよ!!
も―う、のたうちまわりそうになりました!!
最後に佳織は、悠の携帯の名義を変更して使い続けると言います。そこで景志の携帯に登録された悠の名前を佳織に書きかえるのですが、それを儀式と言っているところもエモくて良いんですよ~。
EDで卒業式が終わった後、そのまま電車に乗って景志に会いに来るところも可愛い。この姿を見ていると、本当の佳織はこんなにも可愛らしい子だったんだなと感じます。

響子さんのシナリオは色んな意味で衝撃でした。
何も知らず命令されたとはいえ、響子さんは悠の寿命を縮めるような薬を投与していますからね。
悠が死んだのは槙原と響子さんのせいという酷すぎる事実。
そういう重い罪をヒロインに背負わせるのってよくないですよ……。
案の定、その事で情緒不安定になっていく響子さん。特に日に日に弱って情緒がおかしくなっていく姿は見ていて辛かったです。
きっと景志と会って知ってしまった事によって罪の意識が大きくなってしまったのでしょうね。それが一気に表れて苦しむ姿は見ていて、本当に痛々しかったです。
病院で槙原に出会った時は見るからに嫌な奴でしたから、響子さんのシナリオに絡んできた時はこれ絶対に響子さんがこいつに無理矢理ヤられるシーンありそうじゃん…ってなりましたね。そしたら本当にあるんですよこれが…。そういうのは期待に応えないでくれ……って気持ちになりました。
この医者、槙原が本当に胸糞で毎日響子さんの部屋におしかけては弱っている響子さんをどんどん追い詰めていくんです。響子さんは共犯者ですからね、自分が管理できるようにしたいのでしょう。
響子さんがドアを開けないと槙原は合鍵を使って入ってくるのですが、チェーンをしていると一旦は諦めて帰ります。ですが次に来た時はなんとチェーンを切る道具持参で来るのですよ!なんという胸糞!!
しかも響子さんを救い、何もかも終わらせて2人で支えあって行こうとなった次の日ですよ?
次の日に槙原は響子さんをレイプして精神崩壊までさせていたのです。
景志が響子さんの元に慌てて駆けつけた時にはもう遅くて、なんで響子さんはドア開けたんだよ!ってなりましたが、槙原は合鍵持っていたし、その前にはチェーンも壊していたから部屋に押し入られたのは響子さんのせいじゃないじゃん!なんでそういう所はきっちり辻褄合わせてくるんだよ!!とシナリオに不条理な八つ当たりをしてしまいました。
ある意味、槙原から寝取った響子さんですが、更に槙原から寝取り返しをされるとは……。ぐぎぎ。
知らないとはいえ人の命を奪った響子さんですが、EDが精神崩壊したまま田舎の病院に入院して過ごすというのはあんまりだと思いました。景志は1日2回、響子さんを見舞っていますがもちろん無反応です。この状態はもう響子が苦しむ事も悩む事もない、ある意味幸せなんだって景志が思っているのも切ないです……。

響子さん以上に可愛そうなシナリオが香澄先輩でした。
再会時から退廃的だった先輩。大体、心を閉ざしているのは過去に何かあったからというのはわかります。そして背中に生々しさが残る大きな傷。
やがて2人は淫らな関係になっていくが、自分とHするのだけは頑なに拒む香澄先輩。
景志にフェラをしている時に、髪を乱暴につかんでひっぱる事を要求したりと自虐性が強い。
過去に心に負った傷が香澄先輩をそうさせていると景志は考えます。
だから私も裏切りや死別、いじめなど色々な理由を想像しましたが、まさかの私の予想を斜め上に飛んでいったのには驚きました。
香澄先輩が景志に過去の事を告白する時に

「たぶん…あなたの想像を超えてる」

とまで言っていたので、ある意味これはシナリオのハードルをあげているセリフですよね。こんなに煽って大丈夫なのか?そこまで衝撃の展開があるのか??と色んな気持ちが混ざった状態で読み進めましたけど、やられました……ハードルを軽々超えてきましたね。
務めていた会社の上司が香澄先輩を自分のモノにするために、香澄先輩の彼氏に女を送り込んで別れさせ、ついでに女には香澄先輩の家の合鍵を盗ませて上司は合鍵ゲット。
これだけでもヤバいのに、そんな事になっているとは全く知らない香澄先輩の家に深夜忍び込んで、先輩をレイプ。更に2度と女として生きられないように香澄先輩の背中を切りつけていく。
その後は職場に復帰した香澄先輩は、腫れものを見るような目で見られ孤立していくが、その上司だけが優しくしてくれるため香澄先輩は上司を頼っていく。その上司が犯人とも知らずに。
そんな中、上司が愛人になれと執拗に迫ってくる。そこであの時の犯人が上司と気づき、香澄先輩を職場で孤立させたのも全部、香澄先輩を手に入れるための上司の計画だと気づく。
だが、証拠も無いため香澄先輩は退職届を出して逃げるしかなかった。
もうねこの上司ヤバすぎでしょ……。めちゃくちゃだなって思ったのですが、その後に続く先輩の告白に私は震えました。
香澄先輩はレイプされながら感じていたと言うのです。これには本当にやられました。
この告白がある事で、香澄先輩の絶望感と悲痛さが増しますね。
レイプで感じていると自分で気づき、更に相手もその事に気づいたとわかった瞬間なんて気が狂いそうになりますよ……。
理性で抵抗をしていたけど、どんなにもがいても逃げれなくて抵抗をやめたら、快楽に目覚めてしまった。こんなに感じたことないってくらい、激しく反応した。
否定したい現実、確かに感じる嫌悪感なのに自ら腰を動かしてしまったという事実。
2度と抵抗せずに快感をむさぼり続けて、最後までのぼりつめた自分が呪わしいし許せないって告白がもうね辛い……。
辛いけどごめんなさい、私この告白で凄い興奮しました。
ただ同情するだけの過去じゃなくて、そこからもうひと捻りあったのが本当に凄くて衝撃的でした。
最後は心を通わせて、香澄先輩がまた好きな人に抱かれて感じるようになり、心から笑えるようにまでなったのに急展開で景志達の前に胸糞上司が登場。
しかも親を丸めこんで、信頼できる良い上司に見せている辺り、香澄先輩にとっては絶望的。
そりゃあ大声で叫びながら逃げますよ。こうなったら親に本当の事を話しても、信じてくれなさそうですしね。逆に頭がおかしいと責められるかもしれません。
真実なのに信じてもらえない、悪いヤツなのに良い人だと騙している。こんな世の中ってあんまりだよぉ……。
結果、香澄先輩は完全に心を壊して、景志と体の繋がりを求めるだけになってしまい、少しでも離れる事を拒否するように。
景志もそんな香澄先輩にずっと付き合っているため、家には帰らず誰とも連絡をとらない状態になってしまっていた。
いつまで続くかわからないこの生活だが、景志はもうこのままでいいと思い始める。
香澄先輩はそばにいれば満足してくれるし、終わりが来るとしたら本当の終焉になるだろうと。
――って何ですかこのEDは――!!
お互い死ぬまでずっと一緒だよって言うと聞こえは良いですが、香澄先輩の目は完全に濁ってますし、景志も考える事をやめてます。1度持ち上げてから落とすED、こういうの良くない……。

全部のEDを見た後に、悠視点のシナリオが解放されます。
内容は本編で出てくる悠の日記ですね。シナリオは短いですが悠の想いが凄く詰まってます。
もうね、すっごいすっごい読んでてキュンキュンするのですよ!!
本編では語られなかった、悠と疎遠になった理由やヒロイン達が語った思い出などが悠視点で進んでいきます。読んでいると本当に悠って良い子!!良い子すぎる!!!

2人きりで1泊2日の旅行に行ったが、悠の体調は悪くなり帰るためにホテルをキャンセルした景志。
だけど、どうしても景志と一緒に過ごしたかった悠はわがままを言い帰らなかった。
仕方なく、景志は悠をラブホテルへと連れて行く。
そこで悠は景志と結ばれるんだと思いドキドキするが、景志は悠の体の事を気遣ってHはせずに裸でただ抱き合うことを選んだ。
もうね、この景志君の紳士っぷりが最高ですよ!悠の事を本当に大切に思っていることが伝わってきて、感激です。
悠もHをするものだと思って覚悟をしているんですけど、景志が自分の事を気遣ってHをしないことに気づくと、勝手に期待して緊張したことに恥ずかしがるんですよね~~~!!
自分が思っていたよりも、景志が自分の事を大切にしてくれると気づく悠。
この2人、めちゃくちゃ尊い!!

悠は体は弱いですが、心はとても強かったです。
自分の存在が景志にとって重荷になると感じて、自分から連絡をするのを避けた悠。その事がきっかけで2人は疎遠になるのですが、その間もずっと景志の事を想って日記を綴っているのですよ。
景志への想いがこれでもかと溢れていて、萌えて悶えてヤバかったですねえ……。
私、悠と佳織の姉妹に萌え殺されるところでした。
響子さんと香澄先輩のEDを見て倒れていた所にこのストーリーだったので、どれだけ救われたことか……。
オールクリアして、本当に本当に良かったです。
後ですね、このストーリーで悠のお顔が見れます。本編では顔が隠れていて一切見れなかったお顔が見れるのですよ!
この顔が見れた事によって、今まで神聖な感じがしていた悠の存在がグッと身近になるのも良い演出でした。
最後まで前向きに生きた悠に心が締め付けられ、とても愛おしかったです。


ここまで読んでていただき、ありがとうございました。
更新にだいぶ時間が経ってしまいましたが、これからも感想は書き続けようと思っていますので良かったらまた読みに来てください。